立川がじらオフィシャルブログ(令和)

立川がじら(1986~)のブログです。立川がじらは若手の落語家。

令和5年2月からの出演情報

本日2月3日以降からの出演予定です。皆々様のご来場をお待ちしております。

 

2月5日(日)
前橋観光大使落語会&講演会
@前橋テルサホール
14時開演
出演 談之助、竜楽、がじら、好青年
前売 2,000円/当日 2,500円
お問合せ 昌賢学園まえばしホール(TEL 027-221-4321)

 

2月7日(火)
火曜若手の会SP
@梶原いろは亭(都電梶原駅・上中里駅尾久駅
11時開演
出演 がじら
木戸線 1,500円
ご予約不要でお越しください!

 

2月7日(火)
第2回落語立川流コマド集会
@cafeCOMADO(カフェコマド)(西武新宿駅新宿三丁目駅東新宿駅
19時開演
出演 がじら、うぃん、らく萬(祝二ツ目昇進)
前売 1,500円/当日 2,000円(ともにワンドリンク込み)
ライブ配信 1,000円
お問合せ https://co-ma-do.jp/

 

2月10日(金)
立川流10日千里寄席
@ばばん場(高田馬場駅
19時開演
出演 志のぽん、がじら、かしめ、志らぴー(祝二ツ目昇進)
木戸銭 2,000円
お問合せ https://www.baba-n-ba.com/reservation.html

 

2月12日(日)
神田連雀亭 昼席
@神田連雀亭(淡路町駅秋葉原・神田駅など)
13時30分開演
出演 がじら、鯉舟、市寿、紋四郎(変更の場合あり)
木戸銭 1,000円
ご予約不要でお越しください!

 

2月12日(日)
立川流広小路夜席
@お江戸上野広小路亭上野広小路駅御徒町駅上野駅など)
18時45分開演
出演 左平次、談吉、談四楼、がじら、らく萬
前売 1,800円/当日 2,000円
お問合せ 落語立川流一門会情報_会場/問い合せ | 落語立川流

 

2月24日(金)
第3回 復活!五派DE深夜寄席
@cafeCOMADO(カフェコマド)(西武新宿駅新宿三丁目駅東新宿駅
21時開演
出演 鯉津、始、兼矢、がじら、獅鉄
前売 1,000円/当日 1,500円(+ワンドリンク500円)
ライブ配信 1,000円
お問合せ https://co-ma-do.jp/

 

3月2日(木)
立川流日暮里寄席 立川左談次追善興行
@日暮里サニーホール・コンサートサロン(日暮里駅)
19時開演
出演 佐平次、談吉、キウイ、がじら、寸志(トーク)
前売 1,800円/当日 2,000円
お問合せ tatekawagajira@gmail.com もしくは https://tatekawa.info/2023-02/

 

3月31日(金)
金曜日の新宿 奇数月・新作の会
@新宿永谷フリースタジオFu-+(西武新宿駅新宿駅
19時開演
出演 談吉、がじら、志ら鈴、志ら門、かしめ
木戸銭 1,000円
お問合せ 落語立川流一門会情報_会場/問い合せ | 落語立川流

 

4月16日(日)
だれでも落語 ※ボードゲームカフェでの落語会です
@テンビリオンポイント(神楽坂駅江戸川橋駅
19時開演
出演 志ら門、がじら
木戸銭 2,500円
お問合せ 「だれでも落語」イベント参加申込書

 

リンクの貼り方などにムラがあり申し訳ありません。

ご来場お待ちしております。

2021年を振り返る

2022年になったので、ブログとしてはひとまず、2021年の振り返りということで少し書かせて頂きます。12か月。いきなり長い。

 

①1月

2021年は前年より引き継いだコロナ禍という、未曽有の年明けから始まったわけですが、壊滅かと思われたお仕事も関係者各位のご尽力でなんとか繋がったものもあり、責任を伴う判断をしてくださった方々には誠に感謝でございます。
1月は新春の会、延期になったものがいくつかある他、日野と足立区に伺えた。やった中~大きめのネタは『宿屋の富』『うどん屋』など。冬場は大ネタが多いので、毎年手掛けていかなければ。
『宿屋の富』は自分好みのギャグを入れて狂気の演目に。謎の貧乏な田舎者がまさかの宝くじに大当たりしちゃうシーンで入れたとある工夫は、手前味噌ながら大好き。味噌が手前、奥に蜂蜜。

 

②2月

下旬に、縁があり参加させてもらっている劇団「地蔵中毒」で下北沢のザ・スズナリという素晴らしい劇場にて公演させて頂いたので、それに費やしたような一か月でした。
いま毎月お世話になっているAI演芸部さんの配信企画でかませけんたと落語の二人会をやったり、連雀亭の出番があったりしたほかは演劇の日々。
劇中では、はえぎわの町田水城さんとコンビみたいな役どころをもらって、とても勉強になりました。アフターイベントで松尾スズキさんにご出演頂けたのは夢のようだった。とても嬉しい期間でした。自分の過去が羨ましくなるくらい。

 

③3月

この月に入るとやはり思い出すのは10年前の11日で、入門したばかりの頃だった。このお話はこの時期に高座でしているので書きませんが、あれから10年経っちゃったと今の自分を見るとそれはそれで不安になるのであります。
この20日、席亭にお世話になって越谷のごりごりハウスという良きライブハウスで「越谷ごりごり寄席」。10年前に師匠がこの頃よくやっていた『人情八百屋』をかける。江戸っ子の無私(ボランティア)っぷりについて。江戸っ子の主に迷惑なところを笑うのが落語だけれど、そこが彼岸へ抜けていくようなこの感じは野暮ではなく。

その他、キミョラク新作落語『人情ミッシェルガンエレファント』ネタおろし。これも、江戸っ子みたいな話。オリンピックも絡んでくるから、もうあんまりやれないか。

月末に大学の先輩の結婚式があり司会のお役目を頂戴したので夜行バスで京都へ乗り込んだ。とても嬉しいお招きで、少し滞在して観光した。ほぼ中学校の修学旅行以来で、空也像も見たし三条境町のイノダコーヒーにも行けた。そして、ふとしたご縁から京阪ガールのミーさんと少しの時間ですがお会いすることができて、なんだか凄いことでとても不思議な感じだった。10代の頃の自分にコミュニケーションを取りにいくようなこの3月。

 

④4月

本来なら新学期の花の季節なのだけど、世の中は舵を切れない。仕事はほとんどない。映画館で『花束みたいな恋をした』という映画を観た。花束のように紋切型のラッピングをされ幾つも生成消滅する恋愛なるもの、という絶望だと思った、と、その時の感想にあります。

半ばに確定申告をしました。確定申告というものは懺悔のように、私はこれだけ稼いでしまったのですと告白する場だと思っていて、実はこれがある種の快楽と繋がっているのかなと密かに感じています。色も選べる青と白の二色、でもこの時の気分はオフホワイト。

26日、浅草なまらく亭にて独演会。ここでネタおろしした『緊急事態の国のアリス』という自作の噺にはずっと世話になっている。もともと「不思議の国のアリス」のパロディをつくろうと思っていたら、いつの間にか、まん延防止をネタに取り込んだ噺になっていた。大きくウケる時と全然ウケない時の差が激しい落語。わからない人に的外れな感想を書かれたこともある。

 

⑤5月

ここで緊急事態宣言が出たんだっけ、ゴールデンウィークはステイ。ステイゴールドでとお願いされた。本当に何もしない月だったみたいで、日記を見返すと「ぎょうざの満州」に行ったことだとか、いま松屋はトマトカレーを出しているだとか、つまり何もしていない。寄席が営業を停止したのはこのときか!

5月は誕生日があります。何もしません。月末に立川流新作の会で『新垣結衣の夫』ネタおろし。オチでお客席から悲鳴が上がりました。

 

⑥6月

7月にやる地蔵中毒の公演の稽古が本格化する。落語のほうでは、地元の前橋の市民文化会館で円楽師匠がご出演の会に出番を頂く。前橋にちなんだ噺を、とのことで詩人萩原朔太郎にちなんだ地噺を申し上げました。朔太郎を音楽史的に語るという試みを。これはメモリー

あとは、ザゼンボーイズを聴きに豊洲へ行ったり、大人計画を観に下北沢へ行ったり、宇宙論講座を観に王子へ行ったりしました。楽しいのと、楽しさが刺激になってドシャメシャになる自分。勉強しようという気がなくなってしまうくらいにエンターテイメントにはまる喜び。

 

⑦7月

立川わんだ兄さんによる「ラディカル落語」という企画がはじまり『メルカトル氏の問題』という不思議な噺をネタおろし。コロナ以降、無観客配信企画がいくつも立ち上がって、観客席とは何なのかという疑問から要請されたメルカトル氏という不思議なお客さんについての噺。この観点は落語史になかったか、非常に珍しい。

下旬には地蔵中毒の二度目スズナリ本番。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を原作として、御徒町を舞台に繰り広げるドタバタ喜劇。今まで変なおじさんの役がほとんどだったのに、死期が近い老人の役をはじめてもらって、仲代達也さんってこんな気分なんだなと思ったりしました。原作ではゾシマ長老。
オープニング映像収録であやまんJAPANの方々とお会いできたのは嬉しいことでした。あやまん監督はいつか郷土の偉人としてご一緒したいです。

 

⑧8月

頭にシアターコクーンへ初めて行って三浦大輔さんの『物語なき、この世界』をみた。ミネタをはじめて生でみた!という興奮。2月に地蔵中毒で共演したボブ美さんがこんな大きいところで笑いをとっていて、凄いと思った。ほっしゃんの星田さんが背中でみせるシーンがとても良かったのを覚えています。

だんだんとコロナの波がきて、ちょっと緊張の社会状態になったのもこの時期。8月の半ばくらいからとても不穏だった。

23日、つる子姉さんらのYouTubeドラマ企画「ラクバン」の会に出番を頂く。時節がら配信を入れて。会場でお借りした、ゆにおん食堂さんは本当にいい会場だった。年季の近い仲間たちとの会は、もしかしたら一番頑張れるのかもしれない。

月末にはオフィスゾーイさんの企画、浅草なまらく亭での会「シン・がじら」というタイトルがついた。『応挙の幽霊』と『もう半分』ほぼネタおろし。後者は「ウラ芝浜」なんじゃないかと思っていて、あとインド映画「ストーミー・ナイト」の感じがとても合うと思ったので、爺さん側の怖さも出して。うまくいったかな。何せ、お客さんを呼べないのでよくわからない。

 

⑨9月

ワクチンの一回目を摂取。警戒したけど特に副反応はなかったか、仕事があったので先回りして解熱剤を飲んでたのだっけか。

NHKラジオ「NEXT名人寄席」からオファーを頂いて、収録。新作をやってほしいというのは嬉しいことで拙作『世界の終わり』を口演。ナビゲーターの長井短さんが地蔵中毒を観に来られたときの話をしてくださり、この劇団名が電波に乗ってしまい慄く。うひゃあ。

他に新作落語は、ワクチンと耳なし芳一を題材にした噺をつくってこの頃やってました。mRNAワクチンの、ウイルスの設計図(情報)を体内に注射して抗体をつくるという性質が、経文(情報)で身体を守った芳一と似てると思って、その他の共通点をさがして一席に仕上げました。芳一は「耳」を奪われたけど、現代人が奪われたのは「舌」なんだよな…とか。このアイデアを色んな人に伝えたくって!

 

⑩10月

11月に地蔵中毒でコント公演を行うことがきまったので、稽古が始まる。

実は先月から猛烈に仕上げていた、講談社文庫『落語魅捨理全集 坊主の愉しみ』の開設を完成させる。著者の山口雅也先生とは本当に不思議なご縁でこのような大役を任せて頂いたのですが、本来なら僕のような格の者にまわってくるものではない。それでも、がじらなら書けるという賭けに出た先生のために、他の落語家には絶対に書けない視点から書かなきゃいけないと思った。僕の人生は、落語以前にミステリから始まっています。読んで頂ければわかるので、書店で買ってくださいまし。

この本に収められている「らくだの存否」という作品が「らくだ」の解釈として素晴らしいので、このバージョンでやらせて頂いたのもこの月。タイトルからなんとなくおわかりかと思いますが、落語の中では死して動かぬらくだが、ゾンビとなって大暴れする。これが大変に面白いだけでなく、理屈が通っていて、古典のアップデートってこういうことかと思うくらい。是非お読み、そしてご覧ください。

他にもちょこちょこ仕事のことを書きたいが長くなってしまいました。

 

⑪11月

配信でお世話になっている北区のAI演芸部さんの毎月の企画は「落語の基礎研究」となっていて、落語研究会が自明としていることのもっと基礎を考える配信です。ここで『らくだの存否』と『密室(仮)』をやりました。後者は、落語というものの性質が密室めいていることを生かして、矛盾そのものが潜んでいることを明らかにする噺。ふと、西田幾多郎のいう「絶対矛盾的自己同一」は落語において示せるのではないかと思ったりしました。

この時期は母校・明治大学商学部の授業で落語をやらせてもらっているのですが、今はリモート授業のため事前に収録した映像を送る。『風呂敷』をやりました。後日学生さんから感想を頂きましたが、本当によく見てくれていて驚いた。これはとても嬉しいです。

そして24日から渋谷ユーロライブにて地蔵中毒のコント「立ち漕ぎマリリン・モンロー」が開幕。落語家としてはコントではなく落語で出演したいところですが、ここで過去に地蔵のみんなと寄席をやっているし、落語もコントも両方やってる芸人はなかなかいないと思います。アフタートークをすべての回で実施するという狂気。これはここでは書ききれない経験に。掟ポルシェさんはじめ、なぜ出演してくれたのかわからないような方々が来てくださいました。

 

⑫12月

師走!まずゴキブリコンビナートの本公演を観にというか体験しにいきました。個人的に知っている役者さんも出ているのに誰が誰だかわからない狂気っぷりと、後で振り返ると江戸川乱歩の世界そのものだったと思うような物語の凄さ。逃げながらの幸福な観劇。また春にやるとのことで、めちゃくちゃ楽しみに。

東京にこにこちゃんという劇団の萩田くんが落語を四席書いてくれたので、連雀亭で発表会をやりました。萩田くんの人気のおかげで満員御礼!
『落語の一番長い日』とか、にこにこちゃんの本公演のように綺麗な良い噺ですよ。いつか真打に昇進したらトリでこれをやりますね。昇進前に我慢できず普通にやるかも。『嵐の夜に』とか、こんど広小路亭とかでやりますね!

群馬県出身の二ツ目四人で結成したグループ上州事変。県内全市町村で公演を実施する計画で回っていましたが、コロナでお休みに。その久々の復帰会がなんと世界遺産富岡製糸場で26日行われました。世界遺産で落語会をやったんです。これはもう嬉しい限り。みんな頑張って参りますよ。これは別のところで書かなければ。。

 

そんでもって2022年の年明けになるわけですね。

2022年になったので

明けましておめでとうございます。

ブログを全く更新しておらず、ネット上に私の情報が存在していないので不安になる方も多いみたいなので、やはり発信はしなくてはいけないと感じ、いまこうしてタイピングをしています。

ほかの落語家のように、自身のサイトがあって問合せフォームでもあればお仕事が入ったりするのかもしれないと最近思っているのですが、あれはどうやって作っているのか全くわからないので、日々ツイッターのみをやっています。

これは仕事がないわけだ!

ツイッターの中にしかいないのはおかしなことなのですが、居心地が良すぎてそこから出られなくなってしまい、その他のSNSすらできなくなっているのです。

noteというサービスの方で、コロナ禍以降かなりの数の文章は書いています。

立川がじら|note

合う合わないはあると思いますが、ちょっと面白いとは思います。

 

とりあえず今は落語界のメインストリームのところにはいないので探し出すのは困難かと思いますが、近ごろは喋ることと書くことがあまり区別できなくなってきていて、意識があちこち行ったり来たりしています。どこにいる。

いつ死んでしまうかわからないので、アーカイブの海みたいになってるこういうところへ書いて、高座では喋っておかなければならないと近ごろとみに感じています。

それにしても、このブログ記事は面白くない文章だ。更新だけを目的としたから、こうなるんだ!

ことしはちょくちょくやっていこうと思っています。
昨年から始めた日記は続いているので、ブログも書ける身体になっているかもしれません。

ドラッグストアの話から、急に靴下の話になる日記

日常生活というものは途切れないもので、ただ生きているだけなのに

 

ドラッグストアに行かなくてはいけない。

朝からこんな思いがあって、他に郵便局とコンビニにチケット発見と各種支払いに行こうと思っていたのですが、何よりもドラッグストアを優先しなくてはいけないという衝動にも似た観念を原動力として起床しました。

それだけ、昨夜の段階で「明日ドラッグストアに行かなくちゃ」と強く思っていたのです。

ところが、その理由がまったくわからない。ドラッグストアに向かう道中、ドラッグストアに着けばわかると思っていたけど、ドラッグストアに入店してもわからない。

店内で当の品が目に入れば「これこれ!」と思い出すだろうと思って一回りしてみるも思い出さない。シャンプーままだあるのを確認した、ボディソープはもう買っといてもよさそうだから買っておこうか、洗顔フォームは大丈夫なはず、洗剤系は大丈夫だな…歯磨き粉はOK、目薬もまだあるし、おお蚊が出なくなるスプレーは買ってみよう。というか何を買いに来たのかわからないから蚊が出なくなるスプレーを半ばヤケな気持ちで買ってやろう。

レジに並ぶ、そこで、レジ横に不織布マスクが売っているのが目に入り「これこれ!」と気が付きました。

今つけてるマスクが最後の一枚だから、それを買いにきたんだった。(あと、帰宅してシャワーを浴びて顔を洗おうと思ったら洗顔フォームがもうなくて殻を必死に押し出して一回分をひねり出した。買いに行かなくちゃ。どうしてこうなったの)

もうすぐ夏がやってくる。
いや、もう夏になっていると思う。

 

靴下の右と左、なんでだか絶対バラバラになるので、もう揃えようと思うのをやめました。

そもそも、繋がっていないのにどうして同じものを履かなくてはいけないのか。それだったら、離れないように靴下界で工夫をして頂きたい。

もちろん左右異なる靴下を履いていては、社会通念上非常にマズいというのはわかります。しかし靴を脱がないパターンの場合、まさか左右違うのを履いているとは思わないでしょう。これはひとつの享楽です。
第一に、右と左とが画一化されることに対して、抗わなければならない。「右近の橘、左近の桜」と言うではありませんか。
違っていい、個性があっていいんです。対称性を崩しましょう。右がカワイイ感じのとき、左にディストピア感を出しましょう。

人間の身体は歪みがそこかしこにあるようで、左右の重心の偏りがあるといいます。そうした調整を靴下の厚みなどで行えるかもしれません。
靴下は透明でフラットなものではなく、人間が踏みしめる第一のものであり、それゆえ衣類中での傷みやすさはナンバーワンです。足と靴の間で息づく儚いいのちについて、もう一度考えてみたいと思います。

いかがでしたか?

『あまちゃん』全157話の感想。

2013年にNHK朝の連続テレビ小説として放送された『あまちゃん』を、私は一年後の2014年の春から半年くらいかけてDVDで観ました。その際、各話についてTwitterサイズで一言だけ感想を書いていたのでまとめてみました。全157話、いってみます。


あまちゃん第1話。能年が東京から北三陸にやってくると、いきなりキタキツネみたいな動物を見つける。アキちゃんは純と蛍の末裔か。

あまちゃん第2話。蟹江敬三さんが初登場。ただし遺影として出てくる。遠洋漁業に出ている最中は遺影が飾ってあるという設定。また戻ってくるような、そんなような。

あまちゃん第3話。ここでアキちゃんが夏ばっばに押されて海へ突き落とされる格好で飛び込む。アキちゃんはやたらジャンプしてる印象があるけど、これが最初の跳躍。見る前に跳べ!と夏ばっばの教え。

あまちゃん第4話。橋本愛が登場したところでおしまい。都会で育ったのに田舎に馴染むアキちゃんと、田舎で育ち東京に憧れるユイちゃんのファーストコンタクト!なんとなく悟天とトランクスみたいだ。

あまちゃん第5話。ここでの宮本信子小泉今日子との会話は、ちょうど大滝秀治田中邦衛のあの「逃げていくんじゃ…」のシーンを彷彿とさせますね。『北の国から』では弁護士で都会の人だった宮本信子さんが、ここでは逆の役に。

あまちゃん第6話。アキちゃんが海女になると決心。アキちゃんは東京で孤立し引きこもりみたいな高校生だった。純くんは東京に楽しい思い出を置いてきていたのだけど、アキちゃんは逆ですね。五郎と純が敬語で喋るというよそよそしい関係は、ここでは夏ばっばと春子の関係に組み込まれる。

あまちゃん第7話。ウエットスーツを着た木野花さんが昔見た半魚人にそっくり。

あまちゃん第8話。アキのお父さん、尾美としのりの黒川正宗が北三陸にやってくる。ここではじめて小泉今日子いしだあゆみに、尾美としのり田中邦衛に見えてくる。だけど吉野のおじさんが不在。

あまちゃん第9話。塩見三省さん、セリフがいっこもないのに目線と表情だけで特権的な位置に立つ神回!カメラワークのすごさですね。勉強になりました。

あまちゃん第10話。あまちゃん真の最終回ともいえる2013年の紅白で大活躍したヒビキが登場。はじめは敵として現れるんですね。でもそんなことより、東京と地方という対立を「場所じゃなくて人なのよ」と乗り越えるキョンキョン!いいセリフ!

あまちゃん第11話。浴衣の橋本愛と制服の橋本愛が見参。北三陸秋祭の山車の製作準備を手伝う橋本愛。これだけで東北のすべてのお祭のPRになってしまう!なんて回だ!

あまちゃん第12話。ここはもうなんといっても、夏休みが終わって東京に「帰る」ことにした春子とアキが、東京方面への電車からなぜか降りてしまったシーン。あの電車の発車シーン、凄すぎて何度も巻き戻して見てしまった。そのあとのキョンキョン、まるで正解を手にした女神の顔をしてた。

あまちゃん第13回。キョンキョン的な遺伝子は、娘のアキちゃんじゃなくて他人のユイちゃんが継承しているんだなあ。アキちゃんは突然変異の怪物みたいなもんだ!

あまちゃん第14回。食パンの上にアジの開きを乗っけて食うアキちゃんがよい。約束を破って潜水し溺れかけたアキに「アマ失格だ!」と怒る夏ばっば。でも「アマ失格」ってなんか面白い。

あまちゃん第15回。北三陸の観光開発会議が密室コントで面白い!今まであまり喋らなかった安藤玉恵さんが面白い。さまざまなアイデアを経めぐった結果、ミスコンを開催することに。

あまちゃん第16回。ユイちゃんの家に遊びにいくアキちゃん。ユイちゃんちが物凄い豪邸。さよならドビュッシーか!!

あまちゃん第17回。今は田舎でもネットで東京と同じものが容易に手に入る。春子の時代とは違う。だけど、それでも東京に出たいユイちゃん。アイドルになりたいと叫ぶけど、昔の春子のようには動けない。これが時代というものかしら!

あまちゃん第18回。ミス北鉄に選ばれたユイちゃんが、秋祭りの山車に乗って登場。小林幸子の最終段階みたいな装置で登場。さすがNHKの本気クオリティ!民放ではこうはいかない!

あまちゃん第19回。ネット動画から火がついたユイちゃん人気で大勢の観光客にてんやわんやの北三陸。神がかってるユイちゃん。だけどいちばん凄いのは、ウニ丼を作りまくる宮本信子さん。あのヘロヘロ感、本気で心配になる。

あまちゃん第20回。いきなりYMOの『君に胸キュン。』を聴きながら「キュン…キュン…キュン…」と深夜に呟く能年。定期的に観賞したい。

あまちゃん第21回。今週中にウニを獲らないと海女になれないアキ。海に潜ってるアキちゃん、ニルヴァーナのアルバムジャケットみたいになっている。あと片桐はいりさんが素顔なのに日本エレキテル連合みたいになっている。

あまちゃん第22回。ユイちゃんのついでに海女のアキちゃんも大人気に!アキはオーディエンスの前でウニを採るパフォーマンスを行っているが、実はウニを採っているのは片桐はいり片桐はいりが能年のゴーストだったのだ!そのことを客前でバラしちゃう能年。佐村河内聞いてるか!

あまちゃん第23回。天野家には18の頃の春子の部屋が残されている。この部屋を通じて春子とアキが再接続する!昔に浸る春子のカタルシス感が半端ない!ピッコロと神様が同化したときみたいだ!

あまちゃん第24回。海女シーズン最後の本気獲りに参加することになったアキ。潜りの極意は「何も考えない」こと。頭カラッポにして見事ウニをゲットするアキ。なるほど「Never mind」が潜りの極意というわけか。だからニルヴァーナのアルバムジャケットみたいになるんだね、違うか!

あまちゃん第25回。同級生だったキョンキョン片桐はいりが20数年の時を超え対峙する。それを見つめるでんでんさんの心ない表情が最高。そういえば、でんでんさんの「じぇじぇじぇ」は心なくて最高!

あまちゃん第26回。前回の「同級生どうしの争い」はついにユイちゃんとアキちゃんにも。色々あるけど、ここでアキにいちばんの共感を寄せるのはいちばん年の離れた夏ばっば。じんじん。あと、でんでんさんの心ない演技が素晴らしい。

あまちゃん第27回。アキちゃんが種市先輩を初めて見て、一目惚れしてしまう。その時のBGMはYMOの『君に胸キュン。』。かつて「北の国から」で、田舎に対する東京のイメージとして流れたBGMがYMOの『ライディーン』だったのを思い出した。

あまちゃん第28回。渡辺えりさんの歌う『ラヴ・イズ・オーヴァー』が今回の主題歌。そしてまたもや夜中にYMOを聴きながら「キュン…」と呟く深夜がやってくる。恋に溺れるアキちゃん、視聴してて心配になる。

あまちゃん第29回。アキが北三陸高校の普通科から潜水土木科に転入することに。ここで『南部ダイバー』なる歌が登場。どことなく田畑義夫の『玄海ブルース』のようで、本当にアゲアゲだ!

あまちゃん第30回。遠洋漁業に出ているため死んだことになってたアキのおじいちゃん、蟹江敬三が帰ってきた!本放送から一年のタイムラグを経ての観賞で、今は亡き蟹江さん。次週(第6週)はこのおじいちゃんが大暴れするとの予告。楽しみ!

あまちゃん第31回。死んだと聞かされていた父親が帰ってきて、激昂する春子。この夜に天野家で開かれた天野忠兵衛の慰労会のシーン、夢を見ているような気分になる。山之口貘を引用するなら、あの世もこの世もないみたいなのだ。とな。

あまちゃん第32回。前回は夏ばっばの夫であり春子の父だった忠兵衛さん、今回は100%アキのおじいちゃん。世界の海を航海するおじいちゃんと接することで、アキの頭の中のスケール感もぐんぐん広がっていく!!北三陸も東京も、同じ日本だべ。

あまちゃん第33回。ユイちゃんの「アキちゃんブスじゃないよ」のセリフにより、能年が初めてブスに見える記念すべき回。ユイちゃんの了見とアキちゃんの了見が衝突してこうなったんだ。これは逆に奇跡だ。

あまちゃん第34回。ドラマの中で、主要人物が時には母であったり娘であったり、孫であったり女であったりする。その役割がコロコロ変わる。その面白みが味わえる回でした。人生の縮図みたいな回。

あまちゃん第35回。アキとユイの初テレビ出演。あざとく感じられるほどにベタに作り込んであるなあ…と思いきや、外野の人である福田萌さんに施された演出がメタ演出を超えてて、震える。これがセントフォースの了見か!

あまちゃん第36回。終盤で『潮騒のメモリー』のイントロが流れる。この国民的ともなった曲が初めて人々の耳に触れたとき、同時に流れたのは不穏な空気だった…。これで第6週は終わり。放送では次週から5月後半だ。夏歌がそろそろ発売される時期。これ、どうなるのかな!

あまちゃん第37回。初期設定では「暗い人」という設定だったアキの父・尾美としのりが凄くひょうきんなお調子者みたいになっている。忠兵衛・夏・春子・尾美としのりという四者で囲む食卓が、麻雀の心理戦を見ているようだ!

あまちゃん第38回。アイドルになれなかった春子がアイドルを語る。そしてその頃の春子を北三陸のみんなが語る会。誰に聞かせているかって?それは当時部外者だった尾美としのりと能年、そして視聴者にだよ!

あまちゃん第39回。若き日のキョンキョンを演じる有村架純。彼女が故郷を離れるまでの葛藤。キョンキョンと有村、見事におんなじ春子の了見になっている。ただ、東出昌大がなぜ杉本哲太になったのかが謎だ!東出昌大って東大出みたいな名前しやがって!

あまちゃん第40回。いい回でした。漁師を引退した蟹江さんと尾見としのりが北三陸で再就職。アキとユイだけ宙ぶらりんになるなか、実はもっと宙ぶらりんになっている春子。なぜか朝食を中断してパチンコに出かける。

あまちゃん第41回。松田龍平演じる水口が登場。塩見三省の弟子として登場するが…とても怪しい。なにかを感じた渡辺えりさんに「八戸からのスパイだべ!」と詰め寄られる。それはおいといて、忠兵衛さんが漁師に復帰!?

あまちゃん第42回。このままだとジジイになっちまう、そしたらあんたもババアだ。妻にこう伝えて忠兵衛さんは漁師に復帰。忠兵衛さんのセリフ「どこで死んでも一緒だべ」。そして父を送り出すためにキョンキョンがあの曲を歌う!

あまちゃん第43回。水口が怪しさを徐々に出す。アキの物語と春子の物語、そして夏の物語。この3つを接続する喫茶リアスに加わる新参者。新たな展開の予感がビンビンしてる!

あまちゃん第44回。2008年のクリスマスイブ。高校生のアキちゃんはサンタクロースを信じている。なぜなら尾見としのりが毎年サンタをやっていたからだ!娘へのプレゼントのほか、春子に離婚届を渡す尾見サンタ。キョンキョンが離婚届片手に後ろ手で指輪を外すシーンは、屈指の名シーン!

あまちゃん第45回。廃線の危機にある北三陸鉄道を救うための起死回生の策、お座敷列車のアイデア。この呼び物として、アキとユイが何か歌うということになり…ここで『潮騒のメモリー』、と。薬師丸ひろ子も出てきて波乱の予感。アイドルへの道がこっからはじまるか。

あまちゃん第46回。渡辺えりの異名が「北三陸越路吹雪」だと判明。微妙に歌が下手なアキとユイを特訓する。周囲の大人たちがふたりに介入する度合のもどかしさ。というか、他に種市先輩くらいしか未成年が出てこない。だから大人がなんとかするしかないんだなあ。

あまちゃん第47回。アマ指向のアキとプロ指向のユイ。イライラするユイ。ついに激昂するあの名場面。記憶に残る怒り方。これは橋本愛自身の発案によるものらしい。必見。あとユイちゃん、コントレックスみたいな水飲んでる。

あまちゃん第48回。胸が痛くなる回。橋本愛の魔女の目つき、自転車で疾走する能年。もうこんなドラマみたくないよ、お座敷列車よなんとかしておくれ、の回。次回から第9週。リアルタイムだと6月に突入…。

あまちゃん第49回。さあ第9週がスタート。前回までと比べて朝ドラ感が全くなくなっている!印象の薄かった伊勢志摩さんにちょっとずつマニアックネタを喋らせ、さらにキョンキョンが明らかに田中邦衛のモノマネを披露。貴重。ラストの能年の面食らった顔が、キタキツネにしか見えない。最高の朝だ!

あまちゃん第50回。冒頭、アキちゃんの失恋をキッカケに、春子とユイちゃんが一対一で喋る。実は似た者同士の二人の意見交換。重い。あとはひたすら軽くて楽しい。悪い大人の顔の吹越満。土下座するかと見せかけて、ただしゃがんだだけの平泉成。断片がたまらない!

あまちゃん第51回。ユイちゃんがアキちゃんへの嫉妬を告白することでふたりは仲直り。いいタイミングで春子ママが入ってきてよりポジティブな方向へ。ケンカの原因となったのは種市先輩だけど、ユイちゃんのほうにもっと深いものがあったみたい。あまり感情を出さないユイちゃんだからこっちも動揺。

あまちゃん第52回。お座敷列車が走る当日。アキちゃんが復活したと思ったら、今度はユイちゃんが失踪。松田龍平が芸能事務所のスカウトだとわかり急におじけづいたのだ!15分の放送時間中、13分くらいトイレの中に隠れて立てこもってる橋本愛。出てきたときのカタルシス

あまちゃん第53回。走り出すお座敷列車潮騒のメモリーズが歌う。ウニ丼を300個つくるばばあたち。これはもうプロジェクトXもの。お座敷列車は大成功。実はこの日は高校の卒業式。種市先輩はそのまま東京に行ってしまう。水口の反応やいかに!?次の展開の予感。

あまちゃん第54回。2009年4月。アキは高校三年生に。テレビに出たことによりタレント的人気を獲得し、戸惑う。一方、海女たちは自分たちの待遇改善のため、海女カフェの建設を目指して動き出す。プロジェクトXはまだ続いていた!

あまちゃん第55回。海女ばばあたちのプロジェクトXが見積もりレベルにまで育つ。いまだシッポを出さない水口に対して精神的な疑心暗鬼に陥るユイちゃん。プロ指向の苦しみ。一方、アマ指向のアキの楽観。同じ潮騒のメモリーズのふたりのすれ違い。もう解散しちゃえよ!

あまちゃん第56回。いつのまにか海女ばばあたちの海女カフェプロジェクトに銀行からの融資が決まり、輝き出すばばあたち。大幅に超過した予算を削減するため、自分たちでバールのようなものを駆使しリフォームを敢行するばばあたち。途中からまったく働かなくなるばばあたち。そんなばばあたち。

あまちゃん第57回。2009年の海開き。ばばあたち念願の海女カフェがオープン!テレビ朝日ビフォーアフターの完全パロディで進む。ここの正体は、どことなく江戸川乱歩の『パノラマ島奇談』を彷彿とさせるレベルで改装された漁業協同組合なのでした。

あまちゃん第58回。もの凄い急展開。唐突に正体を現した水口。ここで初めて明らかにされるGMT47計画。秋元さんを模した古田新太。なんの予備知識もなしに観ていたら、きっとひっくり返ってしまっただろう!大石内蔵助を大星由良之助にしてるみたいなもんだ。宮藤官九郎は現代の竹田出雲か!

あまちゃん第59回。アキちゃん高校三年生の夏。スカウトされたユイちゃんは東京に行きたいが、家族が反対するパターン。一方、弟子だと思ってた松田龍平が芸能事務所のスパイだとわかった塩見三省、弟子を殴りつけ破門にする。ちょっとアウトレイジを思い出した。

あまちゃん第60回。ユイちゃんがアイドルへの想いを語る決定版の回。北鉄にも知られず、東京ゆきを強行するユイちゃん。それを阻止すべく国道封鎖を企てるお馴染みの面々。これもはや朝ドラじゃねえだろ!

あまちゃん第61回。実はスカウトマンだった松田龍平が皆の前で正体を現し、アイドルの天下一武道会みたいな構想を語る。大人たちに諌められ、ユイちゃんはとりあえず卒業するまでアイドルお休み。水口も東京へ帰ることに。松田龍平がダークでシビアなことをしてるのを見たい人にオススメの会。

あまちゃん第62回。北三陸のアイドルを休業してふさぎこんでるユイちゃん。そして日本各地のご当地アイドルが徐々に姿を現してくる。まるでラッキーマンゆるキャラと一緒ですね、土地の名産品にちなんだコンセプトで産み出されるアイドルたち。これは擬人化なのね。

あまちゃん第63回。アキが発案した企画、海女ーソニック。これは海女カフェで行われるフェスだ!開催に向けて動き出す。そして鈴鹿ひろ美主演映画『潮騒のメモリー』(1986年)の全貌が適当にボカされながら少し明らかに。引きこもってたユイちゃんも出てきたよ、自分のために歌うため。

あまちゃん第64回。冒頭の寸劇が多分あまちゃん史上最高に面白い!朝の連続テレビ小説を日常的に視聴されている方々に対して物凄く不親切なギャグ!レディ・ガガレディ・ガガときてまさかのレディオ・ガガ!ともあれ、無事に海女~ソニックは開演。潮騒のメモリーズ復活。しかし…。

あまちゃん第65回。キョンキョンの平手打ちが能年に2回も炸裂する回。痛めつけられる能年、反発する能年。海女もアイドルもおんなじサービス業だ!とアキ。おら、アイドルになりてえ!とアキ。意思表明の回。

あまちゃん第66回。プロデューサー太巻に呼び出されたのを契機に、密かに東京行きを企てるユイとアキ。西村京太郎ばりに交通網を調べあげ、大人の目をかくくぐる策を練るユイ。ウニ丼を頬張りながら、涙で夜汽車に揺られるアキで今週はおしまい。次週、ついに東京編か!?

あまちゃん第67回。ユイとアキが北三陸を抜け出す、その夜の物語。緊迫感溢れる至上の回。ユイとアキはいかにして大人たちの設置した検問を突破したか。そこにはアキの策略を超えた魂の叫びがあった。だけどまたとんでもないオチがつく。なんだよ!!って回。

あまちゃん第68回。海女は今でなくともできるが、アイドルは今しかできねえ。アキはそう語る。じいちゃんが言ってたように、北三陸がいちばんいいとこだと知るために世界に出ていくのだ!この遺伝子を了承する海女クラブの面々。じいちゃんを送り出したように、ばっばはアキを送り出す決意を固め。

あまちゃん第69回。アキの最強の味方になったのは、やっぱりこの人夏ばっば。だけどそれを気に入らないのは春子。なぜあたしをそんな風に送り出してくれなかったの、と。そこへ水口が北三陸に戻ってきたことで事態は再びごちゃごちゃに!変わってしまうものに対するキョンキョンのやるせなさ。

あまちゃん第70回。春子とアキの一対一の直接対決。アイドルとは消費されるだけのもの…と母。しかし娘はそれを乗り越えようとする。すべてのアイドル志望を表象したかのような若き日の春子・回想シーンの有村架純がグッとくる。そして、時代を超えて夏と春子が和解する回。女三人の物語。

あまちゃん第71回。涙をこらえる夏ばっば・宮本信子の顔が市村正親に見えるシェークスピア的濃さから始まる。春子は母によって娘を許した!それでもってアキとユイは東京行きが決まる。今度は北三陸の大人たちが皆味方に。アイドルになる前に海女を満喫するアキ。ユイの側にもドラマが。旅立ちの朝。

あまちゃん第72回。これが夏の場面とは思えない。まるで桜の季節だ。そんな別れと旅立ちのダブルミーニング場面。この回ではじめてアキのモノローグ的ナレーションが挿入される。これは悟空から悟飯への世代交代の合図か。そして突き抜けるほど朗らかなばっばの秘密に、感動。

あまちゃん第73回。パパが倒れて岩手に残ることになったユイを残して上野に降り立ったアキ。各都道府県アイドルGMT47の面々と初顔合わせ。しかし彼女たちは二軍アイドルだった…。今までのあまちゃんから急に跳躍したような映像の数々。しかしこれも、NHKの振れ幅のうち。手数が多いぜ!

あまちゃん第74回。もうだめだ。アイドルを表から描くことを省いて、いきなり裏から描く。激動のアキ、東京編。アキの訛りはまるで悟空。よその星からきた。夏ばっばに向けてのモノローグは、過去のドラマたちへのオマージュに。谷中にあるGMTの合宿所は梁山泊たりうるか!?

あまちゃん第75回。東京では実録ドキュメントのような日々。プロデューサー太巻が華麗に舞う回。今まで語られることのなかった春子の東京編も同時並行的に語られる。この両方をつなぐ男、それがプロデューサー太巻だ!20年のタイムラグを挟んでアイドルの今昔が。。

あまちゃん第76回。ヤング春子は虎視眈々と出世を狙っていた上京直後。アキの上京後はいきなり激しい日々。裏方と雑用にと大忙し。同時にこれは、太巻さんの物語でもあるのだなあ。方丈記を読む能年も貴重な回、最後に突然片桐はいり

あまちゃん第77回。安倍ちゃんとの再会で、上野でまめぶを頬張る幸福のアキ。しかしGMTの面々は苦戦。ちょっと優しく励ます水口。あまちゃんの世界には秋元康は存在してておニャン子倶楽部もいたけれど、アキの時代で秋元康的役割を与えられているのは太巻ではなく、水口だったとわかる回。

あまちゃん第78回。ピエール瀧氏が板前で登場、そんな「無頼鮨」でのエピソード。この回にはあらゆる夢がつまっている!アキが夢のような経験をした回。大女優鈴鹿ひろ美が無敵状態。いつまでも語り続けられるエピソードが誕生した瞬間。

あまちゃん第79回。北三陸に残ったユイは、病床の父と東京でアイドルの卵となったアキへの思いとの間で、すんごい病み出してしまう。アキは東京で種市先輩と再会するも、スカイツリー建設にまわされた種市は仕事を辞めて北三陸に帰るという。実は東京スカイツリーあまちゃんのキーワードのひとつ。

あまちゃん第80回。またもや登場、無頼鮨。種市がアキを連れて行く、なぜか無頼鮨。鈴鹿さんが太巻さんを連れて来る、やっぱり無頼鮨。アキと種市はユイを巡って口論になる。激昂の中、明らかにセリフを噛んで言い直す最高の能年クオリティ。ほっぺにご飯粒がついてるという、心からニクい演出。

あまちゃん第81回。無頼鮨まで鈴鹿さんに会いに行っちゃう、行動するアキ。一方、北三陸ではユイのお母さんが失踪して大変なことに。更にふさぎこむユイ。すごく可哀そう。そんでアキは何だかよくからないうちに鈴鹿ひろ美の付き人になってしまう。そして種市先輩はいつの間にか無頼鮨で働いてる。

あまちゃん第82回。物凄い悲劇が北三陸に!なんとユイちゃんがグレてしまう。北関東の不良みたいなかっこうでうろつく。橋本愛が絶対やらない役。東京では、鈴鹿さんとアキちゃんの掛け合いが面白い。それでも波乱の付き人生活。落ち着く場所は無頼鮨。アキも種市先輩も、修業の日々。

あまちゃん第83回。不良になったユイをとっ捕まえてリアスに引きずり込む春子。ブティック今野の服で完全武装し、ナポリタンを「ほら、アバズレの食いもんだよ」と出す春子。あまちゃん屈指の名ゼリフがここに。このやりとり、キョンキョンが最高にカッコいい。ブティック今野パワーでユイを笑顔に。

あまちゃん第84回。一軍のアメ女と二軍のGMTごちゃ混ぜで国民投票が行われることに。ワースト6がクビになることも決まり恐怖に揺れるGMTの6人、迷走。そして太巻はアキが天野春子の娘だと知り、震え出す。これで第14週はおしまい。瀧さん薬師丸さんが加わり、どんどん面白くなってきた!

あまちゃん第85回。アメ女国民投票で最下位の6人がクビになると発表され、マネージャー水口のところまで抗議にくる能年パパの尾美としのり。一緒にやってきたメンバー小野寺ちゃんのママはなんと石田ひかり。ここは水口が「GMTのメンバーが1人でも解雇されたら自分も辞める!」と切り抜ける!

あまちゃん第86回。GMT知名度向上のため、路上イベントを仕掛ける水口。そんなGMTに雑誌「週刊プレイガイ」の取材が。ライターはなんといまやアイドル評論家となったヒビキ。この効果でGMT人気もジワジワと。しかしアキは、岩手で失踪したユイちゃんママを見かけ激しすぎるほどに動揺。

あまちゃん第87回。前回以降、動揺を引きずるアキ。鈴鹿さんのお陰でドラマのちょい役が決まるが、そのことでメンバー間に不和が生まれ、近づく投票に不安定な女の子たち。なぜかGMTの寮に安部ちゃんが入り込んでいる。埼玉名物餃子フライってなんだ!

あまちゃん第88回。いよいよ開票日。アキはちょい役をもらったドラマの収録へ。NGを連発しまくるというお約束の展開。アメ女国民投票のほうも大波乱。無敵のセンターだったマメリンが男性スキャンダルのあおりを食らって奈落組に転落。一方、現・奈落組のGMTは、、躍進…なの!?

あまちゃん第89回。GMTの徳島担当アユミちゃんが恋愛禁止法にふれ、アイドルを辞めることに。そこへ太巻登場。「アイドルの恋愛を禁ずるのは、君たちを縛るためでない。若くて可能性のある君たちに与える『考える機会』だ」。つまり恋愛はアイドルを辞めるための権利であるということ。いい回だ…。

あまちゃん第90回。無頼鮨のウニに故郷への思いを呼び起こされ、帰省を決めたアキ。2010年の元旦。舞台が久しぶりに北三陸に戻ってきた!寮にひとり残ることになる喜屋武ちゃんも一緒。沖縄の人が北三陸に来る面白さ。実家に帰ると漁師のおじいちゃん、蟹江敬三が帰ってきている!ホーム感。

あまちゃん第91回。正月に帰省したアキを夜の海女カフェに呼び出すユイ。「アイドルとは?」をめぐって本気で衝突する二人。その頃リアスでは…ここで平泉成さんの名優っぷりにみんな泣く。そんなあとの、アキと別れたあとのユイと春子のシーンにもみんな泣く。朝からこんなドラマをやっちゃだめ。

あまちゃん第92回。アキとユイはケンカ中のまま。そしていよいよアキがちょい役で出演したドラマ、鈴鹿ひろ美主演の『おめでた弁護士』新春スペシャルの全国放送日。親類一同集まってテレビを見詰める中で、思いっきりカットされてるというお馴染みの展開。やさぐれユイちゃんを楽しむ回。

あまちゃん第93回。帰省したアキは東京に戻らず海女カフェで働きはじめる。このままGMTからフェードアウトするのかと思うと…かつてない熱量でアキを連れ戻しにやってきたのは、マネージャー水口。東京で知り合った仲間や恩人たちの声を聞かされるもアキは…ここが二重ヒロインの辛いところ。

あまちゃん第94回。アイドルへの思いがさめたユイと、誰よりも熱いアキ。そりゃ衝突するわけで、かつてのふたりの立場が逆転してしまったわけです。ここでふたりは絆を再確認。アキは再び東京へ。そして春子が、今まで語られなかった若き太巻とのエピソードを語り出す。

あまちゃん第95回。昭和61年、大型新人としてデビューする鈴鹿ひろ美は物凄い音痴だった。そこで用意されたデビュー曲を彼女の影武者として歌ったのが、太巻にデモテープを渡していた春子だったのだ!大きな社会に翻弄される鈴鹿ひろ美と天野春子。この二人を繋いだスカウトマンが、太巻。

あまちゃん第96回。鈴鹿ひろ美の影武者として歌番組へ声の出演を果たした春子。時は昭和から平成へ。決して日の目を見ることのない日々に、次第に追い詰められていった春子。自分はデビューできるのか。煮え切らない太巻に業を煮やした春子は、北三陸に帰るべくタクシーに飛び乗ると…あの運転手が。

あまちゃん第97回。夢破れた若き春子を救ったのは、のちにアキの父となる黒川正宗だった。この若き日の尾見としのりは春子の影武者の事実を知る唯一の一般人。レコーディングの日に春子と太巻を乗せ、太巻にカネをもらって沈黙を続けたタクシードライバー。時を経て軽々しく娘に真実を語る!

あまちゃん第98回。アキは鈴鹿さんに「あなたのお母さんどんな人?」と聞かれ、動揺しつつも歌の上手くて歌手を目指していた母だと説明。「あなたは託されたのね」と鈴鹿さん。ハッとするアキ。喜屋武ちゃんの表情のみの演技が、塩見三省さんばりに見事な回。

あまちゃん第99回。上野で行われる岩手物産展のため、ユイちゃん兄の足立ヒロシが上京。アキは鈴鹿さんと春子と太巻の、ある種の三角関係にも似た当時の状況を聞かされる。春子がデビューできなかったのは鈴鹿がいたからだが、もし春子が歌手になっていたら自分は生まれていなかった。数奇!

あまちゃん第100回。アキとヒロシは昔春子がバイトしていた原宿の純喫茶アイドルを訪れる。松尾スズキ演じる店主の甲斐さんは健在。20年の時を経て、カツラを外しただけの見事な役作り。そしてGMTは、デビューの話が頓挫する。太巻に詰め寄るアキ。そこで母の名を出してしまう。

あまちゃん第101回。太巻の口から、アキと水口へ春子のことが語られる。そしてアキは、太巻からクビ宣告を受ける。「うちにいる限り、俺が絶対つぶすから」。事実を知らないGMTのメンバーは反発するが、沈黙せざるを得ない水口。春子に電話で帰りたいとこぼすアキ。しかしそのとき母は。

あまちゃん第102回。泣き言をこぼすアキを突き放す春子。かつて夏が春子を突き放したときと同じ言葉で。だが今回は、いきなり春子が上京することに。春子にプロポーズしている大吉は引き留めるが、もちろん無視!春子、再び東京へ。無頼鮨で鈴鹿ひろ美と対峙する春子!

あまちゃん第103回。無頼鮨にて、大スターの鈴鹿ひろ美に物怖じしない春子。攻める春子ママ「アキは小さな田舎の町で、間違いなくアイドルだったんです」。受ける鈴鹿さん「そんな原石はどこにでも転がっているのよ」。そこへ何も知らない太巻登場。まさかの再会に一番動揺したのはアキだったかも。

あまちゃん第104回。微妙な空気の中、アキをクビにした太巻に詰め寄る鈴鹿さん。見事にアキの解雇を撤回させる。春子は酔っ払ったまま黒川が住む元のマンションに帰宅。ここに元の家族が揃った。ゴタゴタを経たお陰で以前より穏やかなホームに。翌日から春子がGMTの稽古場に顔を出すようになり…

あまちゃん第105回。春子を追って北三陸から大吉つぁんが上京。春子はアキがなんとかなるまで東京にいるつもりだが、離婚が成立している黒川とヨリを戻すつもりはない。奇妙な同居を始める元夫婦。そのまま深夜バスで帰った大吉の気持ちはとりあえず収まったよう。そしてGMTのデビューが決定!

あまちゃん第106回。GMTのデビュー曲『地元に帰ろう』のレコーディング開始。なぜか現場を仕切る春子。的確な春子。その頃北三陸から、ユイが海女になるという報が。じぇじぇじぇ!太巻はレコーディングされたGMTの歌に満足せず「太巻マジック」を発動させる。それを聴いて愕然とする春子。

あまちゃん第107回。太巻マジック!GMTの曲を最新技術を駆使して編集する太巻。その不自然さに春子激怒。声のオリジナリティに関して絶対に譲れない過去があった。母の思いと迫力に押され、GMTを本気で辞めるアキ。代わりのメンバーを探す太巻に、水口「天野の代わりは、いません!」。

あまちゃん第108回。GMTを辞め、暇すぎるためかつての母のように純喫茶アイドルで働き出すアキ。それとなく迎えにきた水口と北三陸の話。電話で勉さんと話すついでにユイと会話。元気が出るアキ。春子は沈黙の末、アキを売り出すプロダクションを立ち上げる!所属タレントは天野アキ!以後次週!

あまちゃん第109回。春子ママが社長となり、アキが所属するスリーJプロダクションを立ち上げる。GMTはアキの代わりに山梨とブラジルのハーフ少女ベロニカを加えデビュー。あとに退けない水口は会社を辞めアキのマネージャーに!売り込みが始まる。最初にエールをくれたのは、なんと鈴鹿さん。

あまちゃん第110回。北三陸にて、黒髪に戻したユイちゃんが海女として完全復活。GMTはデビュー曲が10万枚を突破し軌道に乗る。GMT「中退」扱いとなったアキの孤独感。そこへ種市先輩から、まさかの久しぶりの南部ダイバー精神を注入される。ここでおらのハート、再点火!

あまちゃん第111回。種市先輩の「ユイとはもう別れた…」で始まる衝撃回。華々しいデビューを飾ったGMTを見て沈みこむアキ。春子は自分の影武者の過去と関わりのあった人物たち(現在は要職)に半ば脅しのような揺さぶりをかけ、仕事をゲットしてくるものの…アキはズルを拒否!

あまちゃん第112回。パパが間に入る形で険悪な空気を突き破り、アキをポジティブに。アキはモノを次々と壊すことで逆説的にモノの大切さを教える子供向け教育番組『見つけてこわそう』に出演。「逆回転」というスペックを持つキャラクターでさかなクンと共演。これが大変な評判になり。

あまちゃん第113回。大手予備校のイメージキャラクターになり、テレビにもちらほら出始めたアキ。アイドルとしてスタート。しかしアキは今や両思いとなった種市先輩と交際したくてたまらない。思い切って鈴鹿さんに「欲求不満なんです」「サカリのついた猫背のメスの猿なんです」と相談するアキ。

あまちゃん第114回。広告のアキを見て、北三陸で失踪して東京でひっそりと暮らしていたユイのママ、八木亜希子が春子のもとへ連絡してくる。家族を置いて家出したことを涙ながらに後悔する八木さん。娘を捨てた八木さんを春子は容易に許さないが、そこに母を捨てたかつての自分を重ねたりして。

あまちゃん第115回。夏ばっばが東京にやって来た!人生で初めて東京を訪れた夏さんには、ある目的があった。その秘密を語るとき…耳をふさいだ(だけど実は聴いているという体)大吉っつぁんのポーズがまさに野々村議員そのもの。あまちゃんの先見性にびっくり。

あまちゃん第116回。夏ばっばが東京へ来たもうひとつの目的、それは19の頃に北三陸のリサイタルで会った橋幸夫に会うためだった!鈴鹿さんの仲介で橋幸夫に会いに行くウニ柄の着物を着た夏さん。めでたく橋幸夫と『いつでも夢を』をデュエット。あまちゃん初期から大切な劇中歌でしたね。

あまちゃん第117回。思い出をつくった夏と大吉が北三陸に帰る日、春子は八木亜希子を引き合わせる。彼女をきちんと送り届けるまでが旅なのです。リアスにてユイと母が対面する。この時の橋本愛の演技が凄い。引きの激昂。ついでにお兄さんも怒るけど、こっちは普通。そんなユイに届くアキのメール。

あまちゃん第118回。病床の父をはじめ家族を置いて逃げた母を、ユイは許すことができない。一年ぶりに北三陸に帰ってきた足立よしえの語る失踪の理由。もともとよそ者だったという疎外感。戻ってきたよしえを、心から受け入れる面々。夫の平泉成の一言が優しい。あと、メガネ会計メガネばばあ。

あまちゃん第119回。GMTの新曲『地元サンバ』が苦戦する中、アキはタレントとして好調に進む。太巻にはそれが面白くない。太巻は新たな策として『潮騒のメモリー』を自らの手でリメイクしようとする。主演に選んだのはなんと小野寺ちゃん。しかし鈴鹿さんはそれを突っぱねオーディションを提案!

あまちゃん第120回。『潮騒のメモリー』新ヒロインはオーディションで一般公募となった。しかし裏では小野寺ちゃんで決定の流れ。太巻は、アキを可愛がる鈴鹿さんの意向も取り入れるため、折衷案でアキを海女シーンでの代役で起用しようとする。ここでもまたかつての春子の悲劇が繰り返されるのか!

あまちゃん第121回。夏ばっばが倒れ、北三陸ヘ戻る春子。そこで初めて自分が母のことを何も知らなかったと気づく。一方アキは祖母を気にかけながら『潮騒のメモリー』の主役オーディションに挑む。台本のセリフは「母ちゃん、親孝行できなくて、ごめんなさい」ここで春子とアキがリンクする。

あまちゃん第122回。夏ばっばの手術は成功。アキは一安心。オーディション終了後にGMTの面々とパパと水口とで無頼鮨。話がアイドルの恋愛に及ぶと、水口が種市先輩を裏に連れ出し、大人の事情を持ち出して微妙に恫喝する。そこに現れるピエール瀧氏の顔がシャイニングのジャック・ニコルソン

あまちゃん第123回。鈴鹿さんのプッシュのお陰でアキは潮騒のメモリーの一次審査を通過。二次審査で太巻にいじめられながらも、鈴鹿さんがアキを導いて力を引き出す。しばらく北三陸に残る予定の春子は、初めての親孝行と張り切る。ユイちゃんの両親もすっかり元に戻り、雨降って地固まる北三陸

あまちゃん第124回。二次オーディションで太巻は、アキにかつての春子を彷彿とさせる力を感じてしまった。周囲の上々な評判にも押され、最終審査に残るアキ。そしていよいよアキは、種市先輩をパパとママのいないマンションに連れ込む。先にシャワーを浴びる種市先輩。

あまちゃん第125回。春子が北三陸に居ながら安楽椅子探偵ぶりを発揮してマンションに男がいることを突き止め、アキと種市の現場に踏み込む水口とパパ。絶対に許さない水口と、なぜか優しいパパが見守る。そしてアキは、太巻の納得のもとオーディションに合格する。最終で敗れた小野寺ちゃんの顔。

あまちゃん第126回。アキが『潮騒のメモリー』主役の座を射止め、喜びに沸く北三陸。夏ばっばも退院し春子看病のもと自宅療養へ。今までとはちょっと違う母娘のスケッチが見られる。鈴鹿さんと母娘の関係を演じるアキは基礎を徹底的に叩き込まれ、いよいよ『潮騒のメモリー』クランクイン!

あまちゃん第127回。夏ばっばへの想いからオーディションで奇跡的な演技を見せたアキも、なかなか本番で力を出せない。そこで鈴鹿さんはアキと擬似親子関係を強化するため、事務所マンションで一緒に暮らすことに。それを聞いた春子はまたまた東京に戻りそびれる。ここへきて落ち着かない母と娘。

あまちゃん第128回。アキのラブシーンの相手、前髪クネ男登場。前髪というより、下半身が常にクネクネしている。気が気じゃない種市先輩の狂気が光る。アキにアドバイスするユイちゃんの久しぶりの可愛さもさることながら、ここでアキのあまちゃん史上最高に可愛い表情が見られる。必見のラスト。

あまちゃん第129回。撮影は快調。女優を演じる薬師丸ひろ子が能年よりも可愛く見えた回。北三陸の春子は夏ばっばに携帯電話をプレゼント。ウニのストラップ付き。通常の生活に戻りつつある母を見届け、春子は東京へ。娘として母と限りなく近づけた時間に別れを告げる寂しさに、粋な形でバイバイ。

あまちゃん第130回。潮騒のメモリー撮影最終日。ずっと撮れなかったシーン、鈴鹿さんは見事なアドリブでアキを素晴らしい女優にしてくれた。無事にクランクアップ。無頼鮨で鈴鹿さんがアキに向けた言葉がキラキラしている。ある事情でメガネが壊された水口と、頑張ってる種市、偽善的な顔の瀧氏。

あまちゃん第131回。アキが唄う映画の主題歌『潮騒のメモリー』レコーディング開始。この、現場で、時を超え、鈴鹿さんと春子が交わる。太巻がすべてのわだかまりから皆を解放する、そのキッカケとしての天野アキ。神様とピッコロはもともと一人だったのだ。吹っ切れたアキの無双状態。

あまちゃん第132回。アキがGMTを従えてのファーストライブの日程も決定。アキは北三陸から一向に出てこないユイを招待するが…このライブの日付は、2011年3月12日。物語の時計は3月11日の午前中。これからユイは北三陸鉄道に乗り込み、人生発の東京へ向かおうとしているところ。

あまちゃん第133回。2011年3月11日14時46分。ユイちゃんは北鉄に乗っていて、アキは夕方に迫る初ライブのリハーサル中。視聴者各々にこの瞬間をフラッシュバックさせる。東京側のただただ状況が掴めず蔓延する不安と、高台に停車したため津波を逃れたユイを中心に描く。

あまちゃん第134回。夏ばっばからの「みんな無事 御すんぱいねぐ」のメールにより北三陸側の無事が伝わる。北鉄は地震から五日後に運転再開、大吉っつあんの意地。東京での当時の自粛ブームと、ベーグルの炊き出しで売名と批判される太巻。アキの「被災地」という意識との付き合い方は。

あまちゃん第135回。5月に入るも、どこか虚ろなアキ。インタビューで「マイブームは?」という質問に「ホクロから生えた毛を伸ばすこと」と答えてしまう。歌番組に出るも『潮騒のメモリー』の歌詞が自粛NGに。そこでアキの歌う『地元に帰ろう』に涙する迷走中の水口。どうしたらアキを救えるか。

あまちゃん第136回。アキは岩手に帰りたいのではないか…周囲のこの懸念をついに本人が爆発させる。アキは岩手帰郷を決意し、付き添うという春子に東京残留を命じる。ここでアキの大人感爆発。鈴鹿さんをも納得させる。太巻と笑顔で交わす握手。南部ダイバーで送り出す種市。かくしてアキは地元へ。

あまちゃん第137回。11年6月、北三陸に帰ってきたアキ。すっかり寂れた地元に愕然とする。一駅間のみの運行の北鉄に乗ったアキを迎えた懐かしいあの面々。そこで語られる震災被害のリアル。しかし海女たちは翌週に迫る海開きのために、水面下での行動を開始していた!夏ばっばも現役。

あまちゃん第138回。アキの発案でつくられた海女カフェを訪れると、そこは廃墟と化していた。ここを直すのはオラしかいねえ!とアキ。そこへ現れたユイが一気に空気を冷やす。久しぶりに衝突するも、ユイちゃんの「あたしに会いたい奴は北三陸まで来るがいい!」のセリフで地元の良さを再確認。

あまちゃん第139回。袖ヶ浜の海にウニがいない…みんな浜に打ち上げられてしまっていた。ドラマ中で「原発」というワードは出さないものの、東北の海産物にまつわる風評被害の話題が出る。観光協会の会議も行き詰まったまま。そんな中、平泉成の足立先生が来年の北三陸市長選挙に立候補することに!

あまちゃん第140回。あれほどアイドルに憧れたユイちゃん、震災を経てすっかりその気をなくしていた。アキはユイが見た震災の跡を辿る。そこで見つけた底引き網の残骸から、復興祈願のミサンガづくりを提案。ばっばが後押しする。海の側でずっと暮らしてきた人間たちの、海への想い。

あまちゃん第141回。鈴鹿ひろ美が結婚を発表。お相手は太巻さん。実は長い間内縁関係にあったのだ。なぜか号泣する正宗と、複雑な春子。世間的にもおめでたいニュース。その頃北三陸には、安倍ちゃんが帰ってきた!こちらの様子が気になって仕方がなかった種市も、お盆を待たずに帰ってくる。

あまちゃん第142回。種市先輩が帰ってきたことでヒロシを含むいつもの人間関係が微妙に違う布陣をとり、アキは懐かしさに感じ入る。海女たちはウニを獲りたい。だがそのためには海中の瓦礫撤去が不可欠。作業を急かすばばあたちに、呼応するいっそん。アキはウェブで北三陸から発信し続ける。

あまちゃん第143回。種市は、みんなが笑顔でいられるのは中心にアキがいるからと看破する。ユイとアキの関係は月と太陽のようだと勉さん。お互いが必要な関係。岩手のテレビ局が復興ドキュメンタリー制作にやって来るも、アキは表舞台から去ったユイの感情を慮り、自分の仕事じゃないと断る。

あまちゃん第144回。突然北三陸にやってきた無頼鮨大将、梅頭。故郷に残ることになった種市を激励するや否や、バイクで10時間かけて帰っていく。春子のもとでは水口が事務所に辞表を提出。彼もまた東北へ行くのだ。水口が北三陸にもたらした最初の報せは、春子と正宗の復活婚の報せ。

あまちゃん第145回。水口が事務所の北三陸支社長として北三陸へ出向扱いになる。ユイとアキは車庫に眠るお座敷列車を訪れる。様々な思い出が甦る中、脱け殻のようなユイにアキは不満。お座敷列車を過去の思い出にしようとする大人たちにも「懐かしがってんじゃねえ!」と激昂。北三陸で独り熱い。

あまちゃん第146回。東北を慰問で巡っていたGMTが北三陸を来訪。独り冷めた目のユイ。舌打ちとかするユイ。久々の毒口上が見事。ここで、ほんとはアイドルを諦めていなかった面倒臭いユイちゃんが復活。潮騒のメモリーズ第二章スタートを宣言する!アイドルと直接触れ合うことで、火がついた!

あまちゃん第147回。足立先生の選挙応援で潮騒のメモリーズ復活。政治活動アイドルの効果もあってか足立先生は北三陸市長に当選!ビール飲んじゃってるアキはもうハタチ。第1回で初めて北三陸を訪れたときは16だった。東京の春子は、鈴鹿さんの歌手活動再開宣言にてんやわんや。音痴だから。

あまちゃん第148回。鈴鹿ひろ美がリサイタルの会場に選んだのは、海女カフェ。腹を括った春子は鈴鹿さんを猛特訓。しかし津波にやられた海女カフェ再建の目処はつかず。そこでみんなが選んだのは、みんなの手で再建することだった。そして海開きに合わせ北鉄も運転再開。大吉のスピーチが感涙もの。

あまちゃん第149回。さかなクンが北三陸にやってきた。お魚コレクションを再建しつつある海女カフェに寄付してくれるというのだ。そんな中、忠兵衛さんがリアスに帰ってきた!夏とアキは海中のウニの繁殖調査。震災後、ウニの消えた海にウニが戻ってきたよ。鈴鹿さんも北三陸に現れ大変な活気。

あまちゃん第150回。突如北三陸に現れた鈴鹿さんにリアスは騒然。なぜか橋幸夫を糾弾する蟹江敬三。アキの実家にて、かつての春子の部屋に足を踏み入れる鈴鹿さん。春子と鈴鹿さん、数奇な運命を辿った二人の時間がここでクロスする。夢は時間を裏切らない。時間も決して夢を裏切らない。

あまちゃん第151回。鈴鹿を追って太巻まで北三陸へやって来る。視聴者はこんな展開に疑問を抱くが、ユイもまた同じく「なんで?地震があったから?」と混乱。超ボーナストラック的に挿入される渡辺えりベイビーレイズ。太巻はアマチュア(あまちゃん)を「プロでも、素人でもない」と定義する。

あまちゃん第152回。海女カフェの再建が急ピッチで進む中、鈴鹿さんの音痴が徐々に露呈しつつあり疑念渦巻く北三陸鈴鹿さんの張り切り具合は半端でなく、真実を知るアキは戦々恐々。大吉は安部ちゃんと再婚を決める。プロポーズの伝達方法がまるでスパイ映画のよう。この活気の高まり!

あまちゃん第153回。鈴鹿ひろ美リサイタル当日。真実を知る者たちの慌てふためき。太巻の要請で本番に影武者として春子が海女カフェに向かう。春子がここで有村架純のヤング春子に変身してダッシュする。幻海師範みたい。しかし、歌ったのは鈴鹿さん本人。見事に歌い上げる。あの日の春子が笑う。

あまちゃん第154回。なぜ音痴の鈴鹿さんは本番で見事に歌えたのか。音痴は演技か?憶測が飛ぶが、それはアキらアマチュアと対比されるプロの姿でした。その日、忠兵衛はまた遠洋漁業に出る。蟹江敬三最後の出演シーン。「人生を航海に例えると、一回目より二回目が危ねえ!」と再婚決めた正宗に。

あまちゃん第155回。海女カフェにて、春子×正宗+大吉×あんべ+鈴鹿×太巻、三組の合同結婚式。余興は渡辺えり木野花+美保純のperfume。東京と東北を超えたムードの中、オールキャストが急接近。そして、いよいよお座敷列車が再び走る日。同じでいて、違う時間を過ごしたアキとユイ。

あまちゃん第156回。最終回。前回が最終回でもよかったのです。歴史は繰り返し、28年前の北鉄開通をなぞるように再び北鉄は走り出す。リアス線運転再開。ホームビデオに記録されたアキとユイの姿は、まさにアマちゃん。線路を駆け抜け海へと至る二人。誰にも知られないように、二人っきり。


そしてこの年の大晦日、第157回が紅白歌合戦の中で放送されます。ユイちゃんは北三陸から空を飛んで、東京へとやってくることが出来たのでした。よかった!!

 

20年越しのセンチメンタル・バス紹介。バスは行き過ぎてまた帰ってくる。

1年ぶり、2020回目の9月9日がやってきて、この日になるとどうしたって思い出してしまう曲があります。
例えば俵万智先生だったら、7月6日という有名キラー記念日があって、この日に野菜を積極的に摂取する人が若干多くなると思うのですが、9月9日はセンチメンタル・バスを必ず想起する日なのです。

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「9月9日」は『草原と鉄屑』というアルバムに収録されていて、この大変な名盤は1999年4月に発売されました。私が中学校に入学した月であります。
センチメンタル・バスは前年九月にデビューし、世紀をまたぐ直前、2000年12月31日に解散をしてしまいます。20世紀のうちに封じ込められたキャリアは格別に美しく、花火が上がって消えるまでの一瞬間のような活動期間にも関わらず、あまりにも素晴らしい音楽ユニットなのです。

99年夏、ノストラダムスの大予言によれば人類が滅亡するはずだった夏、この夏のポカリスエットのCMで流れた曲が予言を吹っ飛ばすような大ヒットを遂げます。
“39度の とろけそうな日”この声で、日本の夏の暑さをうたう声が更新されました。
日本の気温はどんどん上昇しているわけで、この9年前にサザンオールスターズが名曲「真夏の果実」の中で“マイナス100度の太陽みたいに”と唄ったときから一気に139度も上がってます。
夏の暑さの暴走によって、地球環境や身体に関する不安も大きくなる一方で、私たちは夏に対してある期待を持っていて、目の前に蜃気楼のように幻でも特別な何かが起きることを望んでいないとは言わせない。暑さに見返りを求めるように、真夏にはきっと何か起こるんだという信仰を持っている。39度という温度には、身体が感じるリアリティとそこを離れた夢が込められています。

13歳の自分がこの「Sunny Day Sunday」の衝撃をどう感じたか。とにかくサビのメロディの出し方が今まで聴いたことのない押し出しの力を持っていて、いまだに聴くたびにビックリしちゃいます。

翌年、中学2年生に進級した春、ニューシングル「マニアック問題」がリリースされます。この曲はソーテックという企業から出た新しいパソコンのCMソングとなっていて、確か舞の海が出演していて(舞の海は飛んでいた)、僕はこれを見て親にねだってこのパソコンを買ってもらったのです。センチメンタル・バスがパソコンを売った瞬間でした。

そこまでの名曲たちを収録したアルバム『さよならガール』は、この夏休みに発売されました。自転車で行けるなじみのCDショップに予約をして、発売日に予約特典のポスターまでもらって帰ってきた。そのポスターはあれから20年間実家に貼ってあります。『踊る大捜査線』のポスターは剥がしてしまったのに、センチメンタル・バスはずっと貼ってあります。たぶん取り壊しの日まで貼ってあることでしょう。

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センチメンタル・バスは、中学生時代というノスタルジー最大の投影点(個人差があります)と、100年ぶりの世紀末の重なるところにちょうど光っていて、個人的経験の上で通過儀礼のように通過していった出来事だったのです。

 センチメンタル・バスの楽曲は、色んな音が入っていて楽しい。小さいメロディがたくさんプログラミングされているので、個々の楽曲が大きく複雑になっていきます。それは人間の感情の豊かさをそのまま聴いているようです。
「悲しい」と思ったって、そこにはただ悲しみだけがわかりやすく置いてあるだけじゃなく、そこから逃げ出すものだったり、悲しさ一色に留まらない多くの色彩が渦巻いています。センチメンタル・バスは、そこを余すことなく表現しようという試みのために楽曲を制作しているのではと思ってしまうほど、とにかく人間の中身を明るみにします。

 

『草原と鉄屑』及び『さよならガール』という2枚のアルバムが素晴らしいので、何曲かピックアップして勝手に紹介申し上げます。

『草原と鉄屑』

  1. ティータイム
  2. よわむしのぬけがら
  3. だんしじょし
  4. ヒル
  5. 9月9日
  6. 夕焼け雲
  7. ねこじゃらし
  8. 空と海と君の話
  9. 星になりましょう
  10. 花火

「よわむしのぬけがら」は98年のデビューシングル。強くなるために殻を破った私の抜け殻は、蝉の抜け殻のようにコンクリートに転がった。通過儀礼のようにして私は次のステップを目指すけれど、打ち捨てられた抜け殻は子供だった私の大切な思い出である。ここにセンチメンタルがやってきた。

「だんしじょし」2枚目のシングル。タイトルは「男の子女の子」と郷のように言い換えられるけれど、男女の分離よりも融け合うような恋があるという印象の曲です。やや先行する天才川本真琴「1/2」に近いのかもしれないけれど、センチバの場合は「1/2y+1/2x」みたいにひとつになれないことが世界であると悟ってしまって、少し悲しいのです。

「アヒル」はサードシングルです。サザンでいうと賑やかな曲を2曲出した次に放った3枚め「いとしのエリー」にあたります。といっても“茅ケ崎の海”ではなく“厚木の空”です。同じ神奈川県内でもサザンに出てこない街です。「TSUNAMI」が“見つめ合うと素直におしゃべりできない”と唄うのとどこか近く、一緒にいるのに目線の合わないようなふたりが出てきます。湯舟で遊ぶ玩具のアヒルのように、虚ろな目。何かが足りない、何かがあれば離れられるのに…というこの切なさ。深くて美しいです。

「9月9日」風が吹いている。終始ものすごい風が吹きすさんでいるような曲です。色んなものが舞い上がる。さっきまでの感情もどこかへ飛ばされる。“その答えは風の中”、そんなことは言わない。答えだと思っていたものが、次の瞬間には問いになって転がってしまう。子供たちは、はしゃぐ。

「空と海と君の話」から「星になりましょう」の流れ。鈴木秋則さんがほとんどの曲を作曲しているなかで、この2曲は赤羽奈津代さんの作詞作曲です。とにかく壮大な物語のような流れで、前者に“時と場所の区別はいずれ消えゆく”とのフレーズがありますが、時=時間と場所=空間という決して離せない2つは、離れない2人のことを表現しているかのようです。音として迫るものも凄まじいです。

ラストを飾る「花火」はのち「Sunny Day Sunday」のB面として取り上げられる名曲です。とろけそうな太陽が沈んだあと、その同じ空に上がる花火です。時期としては「花火」のほうがやや先で、もしかしたら違う世界なのかもしれませんが。それほどまでにかけ離れている曲ではあります。花火の音、光、匂い。五感を刺激するものが過去を引き寄せる。花火が上がって咲いている最中に、過ぎ去ったことがよみがえります。すぐに消えてしまう、その儚さのセンチメンタルです。

 

『さよならガール』

  1. Sunny Day Sunday
  2. サイクリングビート330
  3. さよならガール
  4. SUMMER TIME KIDS STORY
  5. 飛行機雲とチワゲンカ
  6. 400,000,000ロック
  7. WEED CROWN
  8. YELLOW TRAIN
  9. Silver Snow
  10. 月の空ライダース
  11. マニアック問題
  12. 半ズボン

だめだ、もう想定している字数を超えてしまったので『さよならガール』について書けない。これは次の機会に譲ります。おそらく来年の9月9日に。

 

書いていて、センチメンタルは長続きしないセツナ的なものなのかもしれないと思えてきました。それでもセンチバの長くはない活動期間と残った楽曲の普遍性は、いつだって回帰してくるのです。

現在の私の大師匠立川談志の名言集の中でいちばん好きなのが「バスで帰ろうネ」という不思議なワードなのですが、こんな言葉から感じられる懐かしさや優しさはきっと、バスに乗ってゆっくりとやってくるのでしょう。

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センチメンタル・バス赤羽奈津代さん、鈴木秋則さんの2人組音楽ユニットです。

東京にこにこちゃん『ラストダンスが悲しいのはイヤッッ』と死んで名が残ることへの抵抗について

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八月二十八日から九月四日まで映像が無料公開されていた舞台の感想その他を書きました。

東京にこにこちゃん『ラストダンスが悲しいのはイヤッッ』は令和二年の一月に上演されて、この頃、外国で発生した新型ウイルスのことは情報として与えられていたはずですが、国内で心配している人はほとんどいなかったような感覚だったと思います。時代が変わる前の最後の観劇だったかもしれません。このほど全編の映像公開という僥倖に巡り合い再びの観劇がかないました。

 ~


この物語にはとても奇妙な前提があって、しじみさん演じるヒロインのミショーという名の女の子は死ぬことが決まっている。両親とともにエンディングをプランニングするところから台本は書き始められただろうし、死ぬかどうかでハラハラさせることはしない。死ぬ。織田信長だと本能寺で焼け死ぬことは決まっているけれど、ミショーの最期はどうなるかわからない。とにかく死ぬ。
(この点に関して萩田頌豊与氏は、極力ヒロインが死ぬことでエモーショナルに湧き上がる感動を抑えたかったのだとオーディオコメンタリーで語っています。彼女の死は、ラストシーンまでに明確に表現されます)

ミショーの名前が美笑と書くことはパンフレットに役名が記してあるために劇場の客席に座ればわかるのですが、この名前は呼びかけるたびにまるで外国語のように響いてひとつの違和感となります。
名前/呼び名にまとわりつく違和感は、この物語を通じて幾度も呼び起こされます。
例えば、新たな登場人物が現れると、まず既知の人物がこの新参者の名を紹介し、その後にかの人物は自ら名乗るという少々回りくどいような他己から自己へいたる紹介の形が出てきます。確かに名前とは、そのようにして誰かと結びつけられるものであり、名乗りを保証するものとして名刺まで用意されています。

また9歳の瀬在真一(タカギ道産馬)は母親・典子(矢野杏子)のことを常に“母(はは)”と呼びますが、必要に応じて適宜「自分を産んだ女」と言い換えたりします。後半でぐんぴぃのことを説明するシーンもそうですが、真一にとって、ひとつの名はなく、そのつど辞書を読み上げているかのようです。この奇妙さは、名前とその指示する対象の結びつきの不確かさを不気味に浮かび上がらせます。

 

ここで名前というものについて忘れがちな前提を確認しなくてはなりません。それは、人は誰も自分の名前を付けることができないということです。
名字にしろファーストネームにしろ、名前は誰かが決めるもので、人は決して自分が欲した名前で呼ばれることはないのです。

私やキミ、あなた。これらは代名詞で、あなたという個体を離れても必ず何かを指示することできる。呼びかけるときに用いられる立場や役職もまた、代名詞であります。

あなたの名前は、あなたのことか。

そうではあるが、これは考えるほどに違ってくる。
あなたに付けられた名前は、あなた自身ではない。それ自体もともとあった出来合いのコトバで、あなたでなく他人に与えられてもよかったものです。同名の人物は何人もいることでしょう。例えば、ある女性が新幹線でたまたま隣り合った女性の名が自分と同じ“ナナ”だとわかった場合、何かしら縁を感じてしまうようなこともあるはずです。もちろん彼女たちは他人です。偶然性がそこにあります。

 

名前とは単に名ばかりのもの、“あの人”や“あれ”と同じく代名詞ではないでしょうか。だから、名前があっては邪魔で“その人”に近づけないのかもしれない。

かの椎名林檎も『罪と罰』で「あたしの名前をちゃんと呼んで」のあとに「身体を触って」と続けなくてはいけなかったのは、名前なんてたかが名前じゃねえかってことだからです。かのアン・ルイスの『グッド・バイ・マイ・ラブ』も忘れないのは「あなたの名前」でここが余韻を残すのですが、くちづけのときの話です。そのぬくもりに用があったわけです。このぬくもりに、名前はつけられません。

 

美笑の親友である楓(hocoten)は、美笑を愛するあまり彼女に成り代わって死のうとする。そのために楓は美笑を名乗る。代わりの名としての美笑になろうとする。名前はそもそも誰のものでもないゆえ、楓の意図は成功しかけます。
(“楓”という名は、萩田氏が大ファンのスピッツの名曲『楓』からとっているんじゃないかと思うのですが、それならば楓は「君の声を抱いて歩いていく」ことになる。生き残る側の人間です)
楓は、ラストまでに自らこの葛藤を乗り越えて誰よりも力強い声を出します。

篠崎(ぐんぴぃ)は、葬儀施設で火葬を担当する職員でありながら死体愛好家である。お気に入りの死体をとっかえひっかえで交際する。死者をモノとして自分の意のままに扱うような唯物的な思想の持ち主かと思いきや、登場人物中で実は最も死者の人格というものを想定している、宗教的情熱のようなものを持つ人物として現れます。死体そのものは、名前と分かたれて朽ちていく。残る名に対して消える身体を、無条件に愛でる彼岸の人です。劇中ではそういう描かれ方をしていたような気がします。

 

どうして名前だけが残るのか。思い出も、みんな死んでしまえばもう残らない。世界中の人間から忘れ去られようと、そんなこととはまったく関係なく名前は残る。名前と簡単なデータは、国家の保証の限りで残るものです。生きた人の、名前とそこから零れ落ちて消えてしまうものを、いつまでも繋ぎとめておきたい。それは不可能で避けられないものでありながら、涙でなく笑いで対峙しようとする。
そうして『ラストダンスが悲しいのはイヤッッ』の登場人物たちの、死者との約束を果たすようなラストダンスが胸に迫ってきます。

 

俳優陣が思い返すたびに素晴らしく、三谷幸喜作品のキャスティングだったらどうかななんて考えてしまいます。

栗田さんと成瀬さんの兄弟は役所広司中井貴一だな、とか。葬儀場の直木さんは佐藤浩市で青柳さんは松たか子がやるんだろうな、とか。矢野さんの役どころは、これは樹木希林さんがやるようなポジションだぞ。そうなると息子のタカギさんの役は難しいぞ、これはもうロバート秋山さんだな、とか。もちろん現行のキャストが素晴らしいので余計なのですが、皆さんが名優にみえたのです。

最後に、最後のBGMがかかるとき、ラストダンスの直前に、空間を花で満たしていくとき、その葬儀の準備が進行するにつれて、ラストダンスに向かって盛り上がっていくところ。絶頂の前、ここで最も感情が昂って、客席がまだ見ぬラストダンスを了解したのでした。

オーディオコメンタリーでしじみさんが、初日終演後に萩田氏と「今日が千秋楽でもいいね」と話したというエピソードを口にされていましたが、それはそれは素敵な劇だと思いました。